2010年5月17日月曜日

化学の雑誌と論文


こんにちは、私は大学で材料をつくる化学の研究・教育をしています。
貝殻や骨のような自然界の温和な材料から学び、より役に立つセラミックスを焼かないでどのように水の中からつくるかの化学合成プロセスを研究しています。
私は今回、化学の研究の世界からひとつ話題をお届けしようと思います。

さて、みなさん雑誌というと何を思い浮かべるでしょうか?
週刊誌、ファッション雑誌、趣味の雑誌、週刊~~といったマンガでしょうか?
みなさんお好みの雑誌を楽しまれているかと思います。

そもそも、雑誌とは国語辞典によると「いろいろな記事を載せて定期的に出す本」という意味だそうです、化学の研究の世界にも雑誌があります。それは、論文がたくさん載っている雑誌です。

大学、研究所、企業で行われた研究の中には、論文として世に公開される研究があります。
特許を出願し、自分たちの研究を保護する場合もあります。

論文は日本語もありますが、英語で書く場合も多いように思います。
日本発の優れた発見・技術・研究を、日本人だけではなく世界中の研究者に知らせたい場合も多いからです。

このような論文がたくさん載っている雑誌はどこの誰が出しているのでしょうか?
世界の学会や出版社が出しています。アメリカやイギリスの化学会、ヨーロッパの出版社などがあります。
もちろん、このだいすきクラブの母体となっている、我らの日本化学会も世界へ英語の化学雑誌を出しています。ぜひ、リンクをクリックしてちらっと見てみてください。
Chemistry Letters誌
http://www.chemistry.or.jp/journals/chem-lett/index.html
Bulletin of the Chemical Society of Japan誌
http://www.chemistry.or.jp/journals/bcsj/index.html

なぜ2種類あるのでしょうか?
これらの2誌のうち、Chemistry Letters誌は短い速報です。
詳しいことはまだわからなかったり、色々あるのですが、とにかく重要な発見をいち早く読者の研究者に伝えたいというような速報性の高い論文が出ています。

自分たちが論文を書くこともありますし、一方で、みなさんが普段雑誌を読んで知識を得るように、他の方々が書いた論文を読者として読んで勉強することも多々あります。また、覆面で審査員をして論文の審査にあたる場合もあります。

論文が出るまでには色々な工程を経ています。
まずは、実験・研究が論文としてちゃんとまとまることから始まります。
著者らの研究グループで論文を書きます。
それを編集部へ投稿します。
編集部が審査員へ論文の審査を依頼します。
審査員の評価や意見をもとに編集部で採否が決定されます。
著者たちにその結果が連絡されます。

ということは、お気づきかと思いますが、論文を出したい・載せたいと思っても採用されない場合もあります(現実的には悲しいかなよくあります・・・)。審査員の意見に従って書き直しや修正、追加の実験が必要な場合もあります。こうして、いくつかの段階を経て掲載採用されると、雑誌に載りますが、まだ仕事は終わっていません。

ゲラ刷りをチェックしたり、色々な書類を提出し、全てが完了した論文から順に雑誌へ掲載されてゆきます。

今では、電子版として紙の雑誌に印刷される前から論文をインターネット上で見ることができます。それに、グラフィカルアブストラクトといって、写真やイラストでその論文をわかりやすく説明する欄があるので、絵でその論文の内容を何となく把握することができます。

将来の化学者であるみなさんも、論文を書く日がやってくるかもしれません。
自分たちの論文が、世界の研究者が見る雑誌に載るのは、世界を相手に実験・研究しているんだなと実感できる何ともうれしい瞬間、研究者であることを実感できる瞬間です。

しかし、英語にせよ日本語にせよ、よい文章・論文を書くのはとても大変な作業と感じています(つまり私は未だできません・・・)。
みなさんは化学をはじめ物理、生物、理科、算数、数学は好きかと思いますが、国語や小論文、夏休みの作文、読書感想文も決しておろそかにせず、ぜひ正しい日本語と文章を書くこと、他の人が読みたくなる名文(≠迷文)を書ける力をつけて下さい。

これから梅雨や定期試験、、、化学グランプリを受ける方もいらっしゃるでしょう。
夏休みまでがんばって過ごして下さい!