2011年6月11日土曜日

化学の実験は楽しい?きびしい?~安全第一で楽しむために

はじめに、3月11日に発生致しました東日本大震災によって被災された方々に心よりお見舞いを申し上げると同時に、1日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

私は大学で材料をつくる化学の研究・教育をしています。今回のタイトルを見ると、「えっ?化学の実験はきびしいの?」と思うかもしれません。いやいや、楽しいと思います。ただ、安全第一、ということで思ったことを書かせていただきたいと思います。

しかし、人生と同じ、楽しいときもあれば、きびしいときもたまにはありますといったところでしょうか。当然、世の中に無い新しい現象を発見したとき、予想通りの結果が出たときなど「よしっ!」と楽しくなります。また、実験操作自体が楽しいこともたくさんあります。

大学に入ると、化学系に進んだ方はもちろん、そうでなくても1・2年生で、多くの場合化学の基礎的な実験に関する授業があります。

例えば、中和滴定の実験、有機分子や高分子を合成する実験、化学電池を組む実験、イオンの濃度を測る実験、反応の速度を測る実験等、大学によって色々なテーマがありますが、このような実験を通じて、実験に関する様々な基礎を身に付けます。

新しい発見や最先端の実験からは少し遠いかもしれませんが、基本技術の習得は非常に大切です。中高では時間の関係でなかなか授業中の実験が十分にできない場合もあるかと思います。大学では、みなさん自身が実験を行い、必要な方法や実験器具の扱い方を身に着け、データーと結果の整理の仕方を学び、レポートを書いて提出をします。何より、正しい知識と実験の方法を身に着け、安全に実験ができるようになることは非常に重要です。

例えるならば、この時間を通じて化学実験・研究をする免許(単位*)を取得、職人技を身に着けるようなものです。免許を取得してからは、自由に実験・研究ができるようになるといったイメージです。
*大学では授業で一定の点数を修めて履修を完了することを、単位を取ると言います

私は、大学2年生対象のこのような科目の1つを担当しています。その授業時間では、時にはきびしいことがあります。それは、何よりみなさんの安全のためです。安全に関する注意は常に行われてはいますが、うっかり、安全メガネをしない、廃液を水道に流しそうになったり、床に荷物を置いている、といった安全に関わる場面では、きびしいかもしれませんが注意をします。


化学実験は本来楽しいものですが、それは安全があってはじめて成り立っています。人間誰でもそうですが、慣れとちょっとした気の緩みが生じてしまいます。一般的に、化学実験に限らず、1つの残念な事故の水面下には、小さなミスやヒヤリ・ハッとするような事象がたくさんあると言われています。そのため、可能な限りそのようなヒヤリ・ハッとの可能性の芽を摘み取っておく必要があります。それには、ちょっときびしく注意しなければいけない場面もあります。

みなさんも、化学実験のとき、教員やアシスタントの大学院生がきびしいと感じる場面もたまにあるかもしれません。それは、とにかく安全に楽しんでほしいという願いから来るものに他なりません。

何といっても、化学実験は楽しいと思います。正しい取り組みと器具や薬品の使い方をしていれば、まず問題ありません。みなさんも安全第一で化学実験を楽しんでください!そして、将来は、新しい日本の化学を発展させ、日本の科学技術をリードしてくれることを大いに期待しています!


最後に、楽しい化学実験の結果を示す今月の1枚:
炭酸カルシウムでできているウニのトゲの構造をまるごと導電性高分子であるポリピロールに写しとってみました。生き物の持つ複雑で精密な構造を、合成した材料に持たせようというねらいの実験(趣味?)です。












梅雨ですね、ジメジメしますが、その先には夏休みが待っていますので、
定期試験がんばってのりきってください!