2011年3月3日木曜日

化学を見るには?

こんにちは、私は大学で材料をつくる化学の研究・教育をしているnanoです。
大げさなタイトルですみません。

みなさんは、学校の授業や試験で何気なく化学式や構造式を書いているかと思います。
たくさんの原子や分子、それらの反応式が書けるのではないかと思います。
ところで、原子や分子、それらが並んでいる結晶を見たことありますか?





この写真は結晶内で分子が整列している様子です。黒い部分は原子・分子に相当します。
具体的には、ある種の酸化マンガン結晶の透過型電子顕微鏡写真です。黒く三角形のように見えるのは、その横の絵で示すように、中心をマンガン・頂点を酸素とした正八面体構造の1つの面になります(酸素は隣のマンガンとも共有されています)。この正八面体が連なって酸化マンガンという物質をつくっています。

大きさを見て下さい、1ナノメートルは10のマイナス9乗メートル=10のマイナス6乗ミリメートルです。皆さんが何気なく文字で書いている原子分子はとても小さいですね。この顕微鏡の写真でも、厳密に1個のマンガンと1個の酸素は見えていません、マンガンと酸素がくっついたものがかろうじて見えています。

普段、私たちは光(可視光:およそ400-700ナノメートル)を利用して色々な物を見ています。肉眼ではだいたい1ミリ弱のものを見るのが精一杯でしょうか。また、ガラスなどでできたレンズを使っている虫眼鏡や顕微鏡で、さらに小さなものを見ることができるかと思います。しかし、可視光の波長より短いものを見ることは困難です。

そこで、より小さな物を見るために、電子を利用します。電子を、およそ200キロボルトの電圧をかけて加速させるので、波長はおよそ0.00251ナノメートルです。電磁レンズを使った顕微鏡でとても小さなものを見ることができます。その結果、原子や分子ほどの小さなものを見ることができます。
写真の左端にある背の高い装置です。

ややこしい説明はこのあたりにとどめておきたいと思います。と言いますのは、この先を理解してゆくためには物理の知識も必要なのです。具体的には、光の性質、レンズの性質、電子の性質等などです。そこで、タイトルに戻りますと、化学を見るためには物理の知識も必要なんだなと思っています(ということは、私自身もよくわかっていない・・・)。

もちろん、化合物や原子・分子を調べる(分析する)手段は他にもたくさんあります。例えば、目的の化合物になっているかを調べる際に、はじめはAとBの結合であったものがAとCの結合に変わっているかを調べる場合もあります。A,B,Cを違う重さのおもりと考え、その間の結合をバネと考え、振動させるのに必要な力がA–BとA–Cで違うのを検出するような分析もあります。これも高校の物理で習う力学の知識が必要そうですよね。

他にも、化学を見る・知るためには実にたくさんの分析手段がありますが、よくその原理を見てみると、物理や生物の知識、時には数学の知識が必要であったりします。しかし、そこまで難しい知識は必要ないとも思います。未来の化学者であるみなさんも、化学を見えるようにするために、好き嫌いなくまんべんなく勉強して下さいね。

受験生の方は、大学入試も終盤に差し掛かかってきました。
受験勉強は大変だと思いますが、せっかく勉強するならば、将来に役立つように、できることなら楽しみながらがんばって取り組んでください!

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